Journal / 建築への考え方
性能と美しさを分けて考えない

美しさを,見た目だけに閉じず,温度,光,空気,音,動線,身体感覚まで含めて考えることが大切だと思っています.
特に北海道では,一歩間違えると,どれだけ眺めのよい空間でも寒さを感じる場所になってしまいます. 雪の重さを受け止める構造も必要ですし,人の動きが煩雑であれば,せっかく整えた空間も落ち着いて楽しむことができません.
美しい建築をつくるためには,断熱,気密,暖房計画,構造,動線計画など,さまざまな技術を統合して考える必要があります. それらは,美しさの外側にある条件ではなく,空間の質そのものを支えるものだと考えています.
例えばこの「OLA GA TOCHI」では,海に向かって大きな窓を設けています. その開放感を支えるために,窓そのものの断熱性だけでなく,窓辺の床に暖房用の配管を集中的に配置し,足元に冷気が流れにくいように計画しています.
また,大きな空間を支える梁は,単に構造として隠すのではなく,柱と梁が連続するフレームとして現し,海に向かう空間の奥行きをつくる要素として扱っています. 構造を,空間の表情の一部として考えることを大切にしました.
さらに,エントランスやスタッフの動線は,海の景色を楽しむ人の時間を妨げないように配置しています. 眺め,席の向き,人の動き,光の入り方,暖かさ. そうした一つひとつの積み重ねによって,この空間は成り立っています.
建築家は,ただ見た目を整えるだけのデザイナーでも,技術だけを扱うエンジニアでもないと思っています. その両方を行き来しながら,美しさと性能が分かれずに成り立つ建築を考えていきたいと思います.

Instagramの投稿をもとに,HP掲載にあたり一部加筆・編集しています.
文:斉藤公平|施工:紺野建設株式会社(掲載作品)
