










東西に長い敷地である。北側には陽光も届く条件であったため南側に庭をとり、それに沿うように北側に住宅部分をレイアウトした。ここまでは王道であろう。
せっかく庭のある家に住むのであれば、積極的に庭を使いたい。しかし玄関から靴をとってきて大きな掃き出し窓から庭に出る、なんてことはおそらくしないだろう。そのまま玄関から外へ出て庭に回り込む形になるはずだ。なんだかせっかく隣り合わせにレイアウトした庭と主室の関係がそれでは遠い。薪ストーブを設置するのであれば、薪の搬入を考えて土足のまま薪ストーブまでアプローチもしたい。
これらの条件が組み合わさり、庭と主室の間に長い土間が生まれた。長い土間のおかげで無理なく日の当たる主室まで迎え入れられ、奥行きのある敷地でも動線の長さを感じにくい。
臨時的な客間としても使えるこあがりの畳スペースはソファの代わりにもなれば、土間に面することで靴を履く際に腰掛けることもできて何かと重宝されるはずだ。
外壁にはカラマツを使用している。庇を大きく出すことなく木の箱のようにみせているのは、木壁の家でありながら軽やかな印象を与えるだけでなく、これからこのすまいと一緒に歳を重ね、風合いの変化を楽しむためでもある。家主をやさしく迎え入れてくれる、いい歳の取り方をしてくれたらと願っている。
撮影:永井博史