2021年7月
「Design du Koh」が生まれました
そのはじまりは2008年にさかのぼります
二人は北海道大学工学部で出会いました
卒業後それぞれ就職し
一級建築士の道をコツコツと歩んでいましたが
ある日バッタリ再会
ともに過ごす時間がふたたび流れ出し
「Koh」の羅針盤がうごき始めます
二人がタッグを組み「Koh」はどんな景色を描き始めるのか
今年はじめての雪が降った月
北海道清水町へ向かいました
紺野 将 Konno Masaru
代表取締役社長 Producer/Construction Manager
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■一級建築士(大 臣)363722号
■監理技術者00001303471号
■一級建築施工管理技士B16100439
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1990年 北海道清水町生まれ
2008年 北海道大学工学部
2012年 北海道大学工学部卒業
2012年 清水建設株式会社
2017年 紺野建設株式会社
2018年 紺野建設株式会社 専務取締役
2021年 紺野建設株式会社代表取締役社長現在に至る
2021年株式会社Design du Koh代表取締役社長現在に至る
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斉藤 公平 Saito Kohei
取締役副社長 Designer
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■一級建築士(大臣)378370号
■修士(工学)
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1989年 北海道釧路市生まれ
2008年 北海道大学工学部
2012年 北海道大学工学部卒業
2012年 北海道大学大学院工学研究院研究生
2013年 北海道大学大学院工学院修士課程
2013年 デンマーク王立芸術アカデミー
2015年 北海道大学大学院工学院修士課程修了
2015年 株式会社照井康穂建築設計事務所
2017年 株式会社ミライエホーム
2021年 株式会社Design du Koh取締役副社長 現在に至る
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Hokkaido Tokachi simizucho
はじめにここ
清水町のことを少しご紹介させてください
北海道十勝西部に位置するこの町は
明治31年(1898年)渋沢栄一により設立された
十勝開墾合資会社が熊牛農場を
開設したことから始まります
清水町の由来はアイヌ語を語源とするペケレベツ「明るく清らかな川」
その名のとおり
まとう空気が清々しく
静かでこころ豊かな気持ちになる町
「Koh」の紺野社長は
この地で生まれ育ちました
そして現在も拠点を構える
紺野建設株式会社
この場所で二人が思い描く
これからの建築のカタチ
をお聞きしました
「Design du Koh」 はじまります
「Design du Koh」
VOL壱
CONTENTS
◇北海道で建築を考える
◇学生時代の話と二人の役割
◇「設計事務所をつくるきっかけ」
◇「いい建物を作るために協働している人たち」
◇「ただ、いい建築を作りたい」
-------- 終章 --------
北海道で建築を考える
-聞き手
北海道で建築を設計する面白さって何でしょう?
-斉藤
北海道に旅行に来て、そのまま住もうって話をよく聞きますが。
-紺野
東京から札幌に移住したいっていう人は増えてるって聞きますね。
-斉藤
そうそう、そういう人が増えてくると面白いと思います。
夏の間だけ住む家なんてものでも良いと思いますし。
福岡なんかもそうだと思いますけど、ご飯が美味しいってだけで住むのにかなり魅力です(笑)。
在宅勤務が進んだりして、勤務先と住むところを分けて考えることができるようになってきてますから。
-紺野
週一回会議に参加するくらいであれば
北海道に住みながら働くこともできる時代になりましたね。
地方でも例えば十勝でいうと中札内村は空港が近いし
清水町はJRで新千歳空港まですぐ行けるからそれができちゃうんですよ
-斉藤
北海道の人も移住者も、北海道を好きでいてくれていることが多いですから、そういう土地への愛着がある人達のために、その土地の可能性を生かして設計できることがやっぱり楽しいです。
-紺野
最近だとデザインに興味のあるお客様がかなり増えていると思っています。生活スタイルがそれぞれ違っていますから、自分に合った家をお求めでしょうし、家にいる時間を大切にされる方が増えたのかと思います。昔は暖かい家を作ってくださいって言うのが一番でしたけど、それはできて当たり前になってきました。北海道ではここ二十年ほど高断熱化でずっとやってきていて、技術的に行きついてしまった感があるんですよね。僕は2年前、日本で一番断熱性能の良い家を作ったんですが、暖かさと性能に関してはやることまでやったと思ってしまったんです。次はデザインもしっかりしなきゃと思っていたらお客様もデザインを求めるようになってきて… どの家も個性的で楽しいですね。
-斉藤
「設計」という本来の意味でのデザインはかなり求められますね。見た目、使い勝手、機能性…プロとしてそれらの要望に応えつつ、その土地の個性を引き出す作業が楽しいですよ。日当たりや景色、除雪のしやすさなどは考えなきゃなりません。個人的にはさらにつっこんで、その土地ならではの気候風土や生活様式を頭の片隅に置いておきたいなと思っていて。北海道らしさみたいなものが出せたらいいなぁと思っているんです。
-聞き手
北海道らしさってどんなことがありますか?
-斉藤
昔の家を100%肯定するわけじゃなんですけど、昔の家だから住んでいてできたこととか
自然と起こったことなんかは北海道らしいなと思います。
寒いからこその特徴もあります。
-紺野
玄関や廊下が寒い昔の家って、ミカンやもらってきた野菜がたくさんあってもそこにおいておけば長期保存できたのは良かったですね。
-斉藤
ストーブの廻りに自然とみんなが集まってくるあの感じも良かったりしました。今は技術的にどこも寒くない家を作り出せるようになってますけど、それだけじゃちょっと物足りない。そういうよかったことをうまく取り込めたらいいなと思ったりしています。もちろん玄関は寒くないようにしますが(笑)
設計者として北海道に建つ住宅のアーキタイプに興味があるんです。祖型(そけい)とも言いますが。昔はその土地で手に入る材料が決まっていたり、雪で屋根がつぶれないように角度が決まっていたり、土間が広く必要な地域があったり、そういう気候風土や生活様式が住宅の型を作っていましたがそういう類のものですね。昔の良さをそのままは取り入れられないので、現代の北海道スタイルって言えばいいんですかね、そういうものをもっと探っていけたら面白そうだなって思ってます。北海道じゃないところでもやっぱりその土地らしいものが建てたいなと思いますね。
-紺野
お客様のご要望が一番ですけどね。
-斉藤
もちろん(笑)。
学生時代の話と二人の役割
好きな建築家
-聞き手
好きな建築家の話とかはするんですか?
-斉藤
好きな建築家を一人あげるとしたら、カルロ・スカルパです。イタリアの建築家で、彼の作品を見に行った時心の底から感動してしまいましたね。気持ちを高ぶらせてくれる空間構成や、材料の魅せ方使い方がいいですね。重たい質量のものをちょっと浮かせて使うことで重厚ながら繊細な雰囲気を出したり。もともとガラス工芸をやっていて職人の仕事の良さを知っていて、工芸品のように建築を作っていく。あの感じが好きですね。他にはピーターズントーやマリー・ジョセ・ヴァン・ヒなんかも好きです。渋めなのが好きなんですかね(笑)。建築家の話をすると止まらなくなりますね…私が大学時代在籍していた研究室はみんな好きな建築家の話をしてましたね。
カルロ・スカルパ
ピーターズントー
マリー・ジョセ・ヴァン・ヒ
-紺野
オタクの集まり(笑)。と言ったら失礼でしょうけど、建築が好きですよね、皆さん。
僕は大学にはあまり行かないタイプでした(笑)。
製図室にもあんまり行きませんでしたし、アルバイトばかりしていました。
-斉藤
私はずっと製図室で設計やっていて、それで授業さぼっちゃうこともあるタイプでした(笑)。
-聞き手
真逆のタイプですね(笑)。
-斉藤
そんなこと言いながら紺野は学生のころから優秀でしたね。社会に出てからも噂は聞いてました。
なんだかんだ勉強家ではあるんですよ。北海道に帰ってくるって話を聞いたときは、いろいろ話をしたいと思ってましたね。
-紺野
全然違うタイプなんだけどなぜか一緒にやることになった。性格も性質も違うんだけど波長が合う。
お互いの仕事に干渉せず、互いに信頼してます。得意分野が違うことがよくわかってますね。
-斉藤
彼は色々な世界を経験しているので、どういう空間にいると楽しくなる、落ち着くというのがわかっているから、こちらがデザインしたものをきちんと目利きできる。自分でやるのは得意ではないかもしれないけれど。だから大学で勉強してるだけじゃダメなんですよね(笑)。
-聞き手
役割分担がしっかりしてるんですね
-紺野
かなり違う性質ですよね。僕は何にも長所がないくらいのスーパーマルチなんですよ。レーダーチャートにすると全部平均値な感じ。視野を広げて見るのも得意ですかね。
-斉藤
私はひとつに尖っているタイプですね。掘りこんで行くのが好きです。
私がデザイナーだとすると
紺野はプロデューサーという言葉がピッタリな役だと思うな。
-紺野
…最近、たしかにその呼び方がぴったりだと思ってる。
-斉藤
ちょっと話がそれちゃいますけど。私は折り紙を設計するのも好きなんですよね。こうするとゾウになるとか考えるのが好きで…最近は時間がかかるのであんまりできてませんが。名刺ケースも自分で作りました。とにかく物を考えて作るのが好きなんですね。建築にかかわらず身の回りで使うものも設計したくなってしまう。
-紺野
僕は絶対嫌だ(笑)。
-斉藤
今の時代だから、ドアノブはどれにしますか?とカタログから選ぶ形になりますけど、昔は基本的にすべてデザインされていたりしました。時間とお金をかけていいなら本当はそういうふうにしたいなと思ったりします。
-紺野
僕は細かい物を作るのは嫌いなんですけど、建物を作るのはすごい好きなんですよ。親が建築やっているので小さいころからずっと現場を見ていて。中学、高校の時もよくわからないながらも父と二人で遣り方(※建物の位置を出す作業 工事の最初の工程)を一緒にやっていました。建物見たら「これ、どうやって作ってるんだろう」と。旅行に行っても建物ばかり気になっていますね。デザインというよりどういう順番でどういう風に作ったかが気になります。
-斉藤
いい施工者だ(笑)。
-紺野
ずっとそれしか考えていない。
-斉藤
私は「どう見せているか」が気になります。
-紺野
二人で同じもの見て、視点が違ってもこれはこうだねって話をできるのは楽しいですね。お互い建築の言葉が伝わるから、こんなかんじ、そうそうそう、あれがこうね、で伝わっちゃうんです。 僕は、設計事務所だけで付き合ったのが何十社、付き合った人の数でいくと200くらいは行きます。なのでやり方の違いを見極めたり、目利きの力はつきましたね。
設計事務所を作るきっかけ
-聞き手
お二人は最初から違った分野を志していたんでしょうか?
-紺野
大学在学中、僕は現場の施工、彼は設計、それぞれ分野は最初から決めていました。
だから彼は留学する、アトリエと言われる建築家の設計事務所に就職する、という道を行きました。
僕は現場をやるって決めていたんで、どうせやるなら大きな会社に行こうと。
大学生のころは近くにいても特段深く話すわけでもないし、二人で遊びに行くわけでもない。
嫌いじゃないな、くらいの関係でしたね。
そんな分野が別な二人がたまたま再会して、それで建築の話をしたら
「なんだ、意外と頑張ってるじゃん」とお互い思って(笑)。
それからはたまに建築の話を一緒にするようになりましたね。
-斉藤
事務所設立しました、と言ったら同期から「どんなコラボ!?」と驚かれて(笑)。
二人で会社をやれば
-紺野
2年前までは十勝での仕事がメインだったんですが、今後は札幌でもやっていこうと思って。
札幌にモデルハウスとして自邸を建てようとしてたんです。
その計画を一緒にやってくれる設計事務所を探していたんですね。
ちょうど斉藤と建築の話をするようになってから僕たち35歳以下の若手の集まりを作って勉強会をするようになったんで、その時に
「こんな土地買おうと思うんだけど、どう?」
って聞いてみたんですよ。それなら僕のやりたいこともできるかなと思って。
それで斉藤に「描く?」って聞いてみたら
「描かせてもらえるなら嬉しい」と。
-斉藤
その土地を見たときに私ならこんな建物が良いかなって頭の中に出てきたので、設計したいなとすぐ思いました。
おおよその構想が出来上がっているから、あとは要望を聞いて細かく設計できたらと。
-紺野
僕は自分でデザインしていたこともあるんですけど面白くなくて、他の人に描かせてみたりしたんですが…やっぱり物足りない。なので「じゃあ試しに」と描いてもらったんです。
それで出てきたのがこのデザイン。
僕は図面を何万枚って見てるんで大体形が想像できるんですけど…これを見たときに笑っちゃいました。
バカだなこいつ、やりすぎだろう(笑)って。
僕の面白いもの建てたいっていうのは、彼の設計的な面白さであり、現場的な面白さなんですよね。
-斉藤
まず面白いと思ってもらわないと!と思って、結構大胆に描いたんですよ。私自身近い将来独立しようと考えてましたし、名刺代わりになる面白いものを作ろうと思ってました。
-紺野
これを売りに札幌でやっていこうと考えたときに、ある方に
「二人で会社やればいいんじゃないですか?」
と言われたんですよ。
そこまでは考えてなかったんですがお互い
「あ、いいねそれ」
となって(笑)。
どうせ独立する気があるなら会社作ればいいじゃないと。
-斉藤
10分くらいは考えましたけどね。でもデメリットは何一つないんだよなと。
それでDesign du Kohの設立を決めました。
いい建築を作るために協働する人たち
絵を描く人 現場を管理する人 現場で建てる人
-聞き手
結構あっさり会社の設立が決まったんですね。
-紺野
僕自身設計事務所の設立を考えていた時期があったので、そこは割と自然でしたね。
もともと お客様>設計事務所>建設会社
という仕組みを変えたいっていうのがあったんです。僕の本当の目的はそれです。お客様のためにみんなで作っているはずなのに、間に入った設計事務所が現場では敵になってしまうこともあって、現場監督も職人も100%の力を出し切っていない。日本の建築業界の悪いところだと思います。
-斉藤
逆に工事側主導で設計側の力がないところだと、お客様に対して提案力が無かったりします。
基本的に
「いい建築を作るためにフラットな関係で協働している」
というのが理想です。
私は絵を描く人。
絵を読み取って現場を管理する人。
実際に手を動かして物を作る人。
どの立場が強くても弱くてもダメだと思います。
-紺野
工務店もいいデザインは増えてきていますが、それは設計の環境としては理想ではないと感じています。よりよい物をお客様と作り上げていく、一歩先の提案をする、そういったことが設計事務所に求められている仕事だと思います。そこに現場をわかっているマネージャー的なポジションの人が一緒になって、プロジェクトを進めていく必要があるんじゃないかと考えているんです。
-斉藤
私もこの体制はすごくいいなと思っていますね。
ただ、いい建築を作りたい
-紺野
この体制のお客様にとってのメリットは金額を正確に把握しながら設計を進めることができることだと思います。
打合せのたびに割と正確な見積もりが出せますし、初期段階からコストコントロールがしっかりできるのがい良いところです。
-斉藤
細かい打合せで変更になったところも
差額変更分が割とすぐわかるのは
お客様にとって打合せしやすい環境だなと思います。
-紺野
現場を進めるときも設計との関係が近いので、現場からの質問が即解決できるので現場が止まらない分、結果的に工事費・経費を抑えることにつながりますから、こういうところでもお客様へのメリットが出ると考えてます。
設計事務所の顔色を伺って、、、というスタンスで工事を進めていた従来のスタンスではなく
設計、現場監督、メーカー、協力業者、職人が一体となって
「みんなで良いものを作りあげよう」
という空気をとにかく作りたいです。
-斉藤
現場を担当してくれる紺野建設と強いつながりを持ってやりますが、設計屋としての私が独立した存在であることがミソですね。設計屋と施工屋が同等の力関係で仕事ができます。
設計屋のこだわり100%の家を作りたいわけではないし、設計屋の作品を作りたいわけでもない。
あくまでお客様のためのものを協力して作りたいという感覚ですね。
建築家ってよく業者さんとかから「先生」って呼ばれたりしてます。私も呼ばれることがあるんですがどうも居心地が悪くて。だってこの建築を一緒に作ってくれている方ですから。
いい建築を作れればそれでいいんです。
-紺野
そうだね、ただ、いい建築を作りたい。
そのための新しい会社ですね。
--------終章--------
Epirogue "House of the beginning of Koh"
ここから少し夜景も見えるんです
テラスがあり、その奥にダイニングテーブルがあって
窓越しにもちゃんと夜景が楽しめる
という設計です
誰も建てたことのない土地でいちから建てます
森が近くにあって夜景がきれいに見える所
北海道札幌市
Sapporo City, Hokkaido The house where koh started