Design du Koh_北海道・札幌の建築設計事務所

北海道・札幌の建築設計事務所 株式会社Design du Kohは、長年北海道で培った温熱環境の技術と経験をベースに、お客様とその土地にあった建築を提案します。

アイディアを捨てるとき -設計屋の心情1-

設計をしていて一番決断を迫られる瞬間は、それまで考えていたアイディアを捨てるときである と思う。
学生の頃に自分の不甲斐ない設計に腹を立てて案をボツにしたあの事件は、たまにまだ仲間内にネタにされるけれども…やっていることは今もあまり変わらないのかもしれない。さすがにあんなに感情的ではないものの。ちなみにこの時はそのあと碌なものは出来上がらなかった。学生のころならではの青い思い出である。

しかしこれは悪いことばかりではない。学生の頃も含めた修業時代によく言われてきたことがある。それはアイディアを0に戻すことを恐れるな、ということだ。
その時すでに作り手としてはそのアイディアに愛着があって、なかなか辛い作業であるのは事実なのだけれど… ゴールにたどり着けそうでたどり着けない、しかしここまでそのアイディアを育ててきたときにはもう、それは自分の子供か分身のような、そんな感覚があるからだ。
とにかく何かとっかかりとなるアイディアが出てくるのを根気強く待ち、考えている。そしてどうにかなりそうなものがひねり出てきたとき、それを嬉々として育てていく。そして愛着がわいてくる …しかし最後どうしてもうまくまとまらない。そんな時そのアイディアを捨てる決断を迫られる。

今回も一見よさそうな平面が先にアイディアとしてあったのだけれど、そこにうまい造形を与えることがどうしてもできなかった。結構長い時間考えてみたものの光明が見えない。一晩寝かせて考え直してみても碌なものが出てこない。そしてそのアイディアを捨て去る時が今回もやって来た。この時は結構しょんぼりとしている。自分で決めねばならないから余計に。

結局その後違うアプローチをしていって、その平面よりももっといい平面でよりよい造形を与えることができた。こういう時に設計の嬉しさと喜びがある。