Journal / 自邸の記録
床をどう選ぶのか.

自邸の床材については,計画が具体的になる前からずっと悩んでいました. 個人的な好みで言えば,スクールパーケットやドミノフローリングといった床に強く惹かれていました. あるいは,シナ合板を市松状に貼り,安価でありながら少し新しい床の表情をつくることも考えていました.
ただ,どちらも自分の趣味や関心が少し前に出すぎているようにも感じました. 自邸だからこそ自由にできる一方で,自邸だからこそ,個人的な趣味だけで建築を決めたくないという気持ちもあります.
床は,空間の中で長い時間,生活を受け止め続ける部分です. 強い意匠として主張するよりも,日焼けや傷,日々の暮らしによって少しずつ変化しながら,空間と一緒に歳をとっていけるものが良いのではないかと考えました.
最終的に選んだのはカバの無垢フローリングです.
樹種に強いこだわりがあったというより,お付き合いのある建材屋さんが在庫として持っていたものを,比較的安価に使わせていただけることになった,というのが正直なところです. 合理的なのか,偶然なのか,釈然としない選び方かもしれません. けれども,それでよかった気がしています.
数多ある樹種の中から「自分で」選択していたら,結局は自分の趣味や好みに引き寄せられてしまったかもしれません. 無垢材として自然に経年変化をするものでありながら,過度に意味を背負いすぎないこの選択は,今の自邸にあっているようにも思えました.
素材を選ぶということは,強いコンセプトを与えることだけでなく,時にはその時の縁や条件を素直に受け入れることでもあるかもしれません.
Instagramの投稿をもとに,HP掲載にあたり一部加筆・編集しています.
文:斉藤公平
