Journal / 設計の風景
ふたつの始まり.

自分の設計の始まりを振り返ると,二つの建物が思い浮かびます.紺野建設のモデルハウス「円山西町の望楼」と,「農家の変形切妻」です.
設計者としての処女作と呼ぶなら,「円山西町の望楼」です.一枚のスケッチに描いた構想に夢を膨らませ,それが現実になり,数々のお客様にも見ていただいた.まさに名刺代わりの一作です.

ただ,完成した順番では「農家の変形切妻」が先でした.こちらもまた,その後の設計へつながる経験になりました.
お施主様は切妻の形がお好きでした.私は学生の頃から,切妻をほとんど使ってきませんでした.いくつかの案を重ねながら,美しいプロポーションと,天井高さや吹抜けのあり方を一緒に考えていく.その作業は新鮮で,楽しかった記憶があります.
この後,自分でも驚くほど切妻を使うことになるとは,当時は思っていませんでした.この建物を通して,自分なりの切妻のプロポーション感覚を少しつかめたように思います.


設計の第一歩となったモデルハウスと,先に完成し,新しい形との向き合い方を教えてくれた住宅.完成の順番だけでは語れない,ふたつの始まりがありました.
過去のInstagram投稿をもとに,二つの計画を振り返り,新たに構成した記事です.
文:斉藤公平
