Journal / 設計の風景
同じ林に,ふたつのかたち.
林の中の一つの敷地に対して,二つの案を同時に考え,比較しました.道路からの音や視線が気になる一方,林へ向かって開くことのできる場所でした.


一つの案では,道路側に背を向け,林へ大きく開く構成に,寄棟屋根を組み合わせています.寄棟には独特の魅力がありますが,和風の印象へ寄せすぎず,屋根そのものが美しく見えるたたずまいを探っていました.
もう一つの案では,木立の中にころっと佇む姿を思い描き,直感的に形をまとめています.仕上げには銅板を想像していました.時を経て色や表情が変わったときに,この形がどのように見えるだろうか.そんな時間の先まで思い浮かべながら,模型を眺めていました.


私は,一目で「かっこいい」と感じる形だけでなく,じっと眺めているうちに愛着が深まる造形に惹かれます.自分では,それを「スルメのようなデザイン」と呼ぶことがあります.噛むほどに味わいが出るように,長く向き合うほど好きになれる形です.
二つの模型を並べると,同じ敷地の条件を受け止めながらも,形によって異なるたたずまいが生まれることが見えてきます.どのような姿で林の中に立ち,時間を重ねていくのか.二案を同時に比べることで,それぞれの形が持つ魅力を確かめていました.


過去のInstagram投稿をもとに,二つの計画を振り返り,新たに構成した記事です.
文:斉藤公平
