形状と内部空間

自邸では,雪への対応とともに,屋根の形と内部空間の関係を検討しています. 三角屋根にも無落雪屋根にも,それぞれ明確なメリットとデメリットがあります.
今回は,少し違った切り口で「形状」と「内部空間」の関係を考えてみます. 思考を整理するため,ここでは無落雪屋根を陸屋根に限定し,屋根の形を室内に素直に表した構成を例に考えます.実際の内部空間は,床や天井のつくり方によっても変わります.
雪などの環境条件から考えた三角屋根を,そのまま内部に表すと,高い天井が生まれます. 「ここは高い天井にしたい」といった内部の機能的な要請とは無関係に,「環境によって決まった外形が,内部空間を規定する」という点が特徴だと思います.
一方,陸屋根の場合,素直につくると天井高さは均質になり,室内空間のダイナミズムは生まれにくくなります. そのため,高天井をつくろうとすると,屋根形状を操作したり,部分的に勾配屋根を採用したりといった対応が必要になります. これは,「生活上の機能や要求が,内部空間を規定し,さらに建築の形状へと影響する」という考え方です.
一見すると,陸屋根のほうが自由度が高く,合理的にも思えます. ただ,その考え方はやや素朴な機能主義にも見えますし,「現在の生活に最適化された箱」をつくることに,どこまで必然性があるのかは疑問も残ります.
家族構成や生活スタイルは,想像以上に変化するものです. 子どもが増える,親と同居する,独りになる. このあたりは比較的イメージしやすいかもしれません. けれども,想定していなかった家族との同居も,人生には起こり得ます. コロナ禍によるリモートワークの普及も,薄型テレビの登場によって居間の構成が変わったことも,設計時点で正確に予測されていたわけではありません.
その都度住み替えるという選択肢もありますが, 住宅には,もう少し幅広い人生を受け止めるための おおらかさや包容力があってもよいのではないかと感じています. 特に今回は,大きさで対応できない以上,明確な機能にぴったりと合わせて形づくられた平面や外形に,どこまで意味があるのかを考え込んでしまいます.
人間は,環境に合わせて住みこなすことのできる生き物です. その瞬間の「最適解」を強く作り込むよりも,時間とともに変化を受け入れ,一緒に歳をとっていける家のほうが,長く住む場所としては健全なのではないか.
そう考えていくと,まず建築として成立する外形や形式,骨格があり,内部はその中で住みこなされていく. そんな関係性のほうが,今の自分にはしっくりきています.

Instagramの投稿をもとに,HP掲載にあたり一部加筆・編集しています.
文:斉藤公平
