森を望む窓の前で,模型と図面を広げて住まい手と対話する
Dialogue 03 / After Living

ここが暮しの根っこ

「森景のすまい」住まい手との対話

House竣工後 約1年

一年点検に合わせて,「森景のすまい」を訪ねた.テーブルに並ぶのは,計画途中の図面と模型,そしてお施主様が記録してくださった暮らしの資料.森の見え方を考えて決めた窓の高さは,日々の中でどう感じられているだろう.冬の暖かさや家事の動線,暮らして初めて気づいた細部まで,当時の考えと今の実感を照らし合わせた.

※会話は内容を変えない範囲で,話題の順序や発言を読みやすく整理しています.

Before / After

建てる前の思いと,
一年を過ごした実感.

Before / 建てる前

森の風景を,家の中から楽しみたい.

After / 暮らしてから

足元の花,雪景色,紅葉.どの季節にも,見たい景色がある.

Before / 建てる前

寝室では,主室の音を気にせず休みたい.

After / 暮らしてから

扉を閉めると,主室のテレビの音が気にならない.

Before / 建てる前

家の中を,暖かく過ごせるようにしたい.

After / 暮らしてから

冬の朝も,薪ストーブを手入れしてから火を入れられる余裕がある.

01 / Beginning

森を見ることから,
家の形を整える.

斉藤

最初の図面を見返すと,今のような細長い形ではなかったんですね.森と山の二方向へ開くようにしていました.その後,小さなボリュームをいくつか並べる案を考えていました.

施主(夫)

森も山も,ということで考えていましたね.それから,寝る場所には,主室の音が聞こえないようにしてほしかったんです.

斉藤

それは最初からのご要望でしたね.実際に,この距離を取ることで音は気にならなくなりましたか?

施主(夫)

寝室の扉を閉めたら,主室でテレビを見ていても寝室は静かです.この形にして,予算も抑えられたんですか?

斉藤

基礎の形が凸凹していると費用がかかりますし,大工さんの手間も増えます.もう少しシンプルな形で,同じようなことができないかと考えていました.そうした制約も踏まえて,細長い一つのボリュームを,森の中にそっと据えようと決めていったんです.

細長い切妻屋根と窓の構成を確かめる,森景のすまいの建築模型
02 / Window

低い窓の向こうに,
森の足元が見える.

斉藤

完成からちょうど一年くらいですね.この家で過ごしてみて,まず思い浮かぶのはどんな場面ですか?

施主(妻)

やはり主室の窓ですね.柱にストーブが重なって見えるのもいいです.寝室から森を見る窓は,主室とは違って,囲まれた安心感の中で少しのぞくような感じがあります.

斉藤

主室は大きく開いていますが,寝室は少し囲まれていますね.森側は低い窓,山の方は高い窓という考え方は,初期の図面にもあります.特に森側は,木の全体よりも足元や花に目が向くように,低く横長の窓にしたいと考えていました.

施主(夫)

最初に来た時は,もう少し高い窓だと思っていたんです.でも,慣れてくると,やっぱりこっちの方がいいですね.設計の段階ではよく分かっていなかったんですけど,暮らしてみて,こういう意図だったんだなと実感できました.今でも,飽きないですね.

施主(妻)

お風呂の窓も,夕暮れ時に明かりを消して外を見ながら入ると,すごくきれいなんです.普段は扉を開けているので,お風呂に入らない時も,廊下を歩くと奥に景色が見えるんですよね.

主室の低い窓越しに見える明るい森と,窓辺の薪ストーブ(花の時期に撮影)
主室の窓から見る森.花の時期に撮影した写真.
撮影:永井博史
03 / Seasons

花が入れ替わり,
森を歩く日々になる.

斉藤

この一年で,窓から見る景色が特に印象的だったのは,どの季節ですか?

施主(夫)

どの季節もいいんですよ.冬もすごく良くて,雪が積もった朝も.

施主(妻)

白いオオバナノエンレイソウもいいんですけど,そのあと黄色いエゾカンゾウに入れ替わるんです.一面に咲くと,すごく元気をもらえます.

斉藤

写真で見ると,本当に一面ですね.花の時期は短いですけど,次々に楽しめるんですね.

施主(夫)

5月下旬の花の時期が一番いいですけど,ほかの季節も楽しめます.以前は夏にはあまり来なかったんですが,今年は毎日森に入って,道を3本つくったんです.草木が茂ると森の中に入りにくくなるので,花を避けて,向こうの川まで行けるようにしました.

斉藤

自宅の中でハイキングができますね.

施主(夫)

一年中入れるようになって,真夏でも手入れができるようになりました.冬にはエゾリスが毎朝来るんですよ.小鳥も来ますし,どの季節も楽しめます.

森で過ごす日々について,住まい手の話を聞く斉藤公平
04 / Warmth

火を急がなくていい,
冬の朝.

斉藤

冬の暖かさについて,窓際や寝室,水まわりで,寒いと感じるところはありますか? 朝晩はどうでしょう.

施主(夫)

朝,薪ストーブに火をつける時も,すごく寒いわけじゃないんです.灰を掻き出してガラスを磨いて,10分,15分してから火をつけますけど,それが寒くて苦になることはないですね.

斉藤

いただいた資料にも,ストーブを手入れしてから使うと書いてありましたね.早く火をつけなければ,という感じではないですか?

※施主ご夫妻が室温をこまめに記録してくださっており,取材ではそのデータも見ながら振り返りました.

施主(夫)

全然ないです.前のマンションは,床暖房がある部屋以外,特に脱衣所が冬はすごく寒かったんですけど,この家ではそれがない.家の中の温度の変化が少ないのは,すごく快適です.

斉藤

記録を見ても,主室と寝室で,大きな温度差は出ていないですね.

施主(夫)

薪ストーブにして良かったです.私は最初,灯油暖房しか考えていなかったんですけど.薪をつくる手間はありますが,とても暖かいです.

斉藤

初めの頃から図面にあったような気もしましたが,見返すと,一番最初の案には薪ストーブがないですね.

施主(夫)

子供の頃も薪ストーブだったんですが,手入れが大変だったんです.今のものは違うと聞いて取り入れました.火を見ているのも楽しいですね.

温熱環境などの記録と計画時の図面をテーブルに広げ,暮らしを振り返る
05 / Daily routes

外で手を動かし,
家へ戻る流れ.

斉藤

外から帰ってきて,片付けるまでの流れを教えていただけますか? 例えば,買い物から帰ってきた時はどうしていますか?

施主(夫)

水などのストックは,まず玄関右側の内物置に置きます.それからキッチンへ来て,食品の収納と冷蔵庫に収める.ここまでで片付きますね.

斉藤

森での作業から戻った時はどうでしょう.

施主(夫)

カーポート横の外物置に道具があるので,そこで靴を履き替えます.外の水で手を洗ったり,汚れを落としたりしてから入ってきて,洗濯機を置いてある脱衣所やお風呂へ.距離も気にならないです.

斉藤

洗濯機がもっと手前にあった方が良かったか,ということも気になっていたので,そう伺うとほっとします.

施主(夫)

浴室とクローゼットの位置を入れ替えたのも良かったです.浴槽からお湯をくむ時に,左手を使わなければいけないと分かって,すごく心配していたんです.相談したら,逆にすればいいと言ってもらえて.今使っていても,こちらの配置で良かったと思います.

斉藤

日常のちょっとした動作まで考えることは,大切ですね.キッチンも,コンロが右か左かで使い方が変わります.間取りだけで決めずに,いつもの使い方を聞いて考える必要がありますね.

06 / Details

暮らして初めて,
気づくこともある.

斉藤

住んでみて,想像と違ったこともお聞きしたいと思います.何かありますか?

施主(夫)

細かいところでは,今日見てもらった三面鏡や物干し竿ですね.特に物干し竿は,生活してみて初めて分かりました.付ける前に分かったかと言われると,分からないですね.

斉藤

三面鏡は,収納の開けやすさを優先すると,今回のような開き方になります.合わせ鏡として使いたいというご希望があるかどうかで,選び方が変わるんです.

施主(妻)

三面鏡なら,後ろ姿も見られるものだと思っていました.前のマンションでも特に違和感がなかったので,みんな同じようなものだと思っていたんですよね.

斉藤

打合せでお話ししたつもりでも,うまく共有できていなかったところですね.

施主(夫)

玄関から主室の手すりも,一段二段ならいらないと思っていたんですけど,来た人が壁に手をつくんです.私も,あった方が楽だと思います.住んでみて分かることがありますね.

住み始めてからの使い勝手を,図面と照らし合わせて話し合う
07 / At home

ここに根を張り,
日々が続いていく.

斉藤

最後に,ご自身にとって,この家はどんな場所でしょうか?

施主(夫)

転勤でいろいろなところを回ってきて,ようやく安住の場所ができたという感じです.

施主(妻)

もう,私にとってはここが世界の中心,暮しの根っこを張った場所ですね.

施主(夫)

この地区は畑の向こうに日高山脈が見え,四季を通じてとてもきれいで静かなところです.周りの人もフレンドリーかつ多彩な面々で,生活がしやすく楽しいです.室内は年間を通じて温度変化が少なく快適で,大きな窓から移り変わる森の景色を眺めていると,旅行など他のところへ行きたいという気持ちがなくなってきます.この家はまさに暮しの基盤です.

斉藤

森の方は一年を通して景色を楽しめますね.

施主(夫)

本当に快適です.寒くないというのは,いいですね.

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